大手家電メーカーのパナソニックの自転車部門は実質的に国内最大級のフレームメーカーです。
Panasonic Order System、通称POSの全工程は大阪府柏原市の自社工場で行われます。
そして、パナソニックは世界屈指の電池メーカーです。つまり、フレーム+バッテリーの持ち合わせます。
実際、国内の電動アシスト自転車のパワーユニットはパナソニックかヤマハになります。電池屋かモーター屋か。
日本は電動自転車大国
現在、国内の電動アシストの販売台数は原付をゆうに越えます。そのうちのほとんどがママチャリ系の電動アシスト自転車です。原付より気軽です。
免許なし、メットなし、そして、子供を乗せられるのが大メリットです。原付の二人乗りはNGです。
で、実用的電動アシスト自転車はすでにおなじみですが、スポーツ系の電動アシスト自転車はマイナー・ニッチ・キワモノのレベを出ません。
欧米ではすでにE-bikeが激アツです。ヨーロッパではドイツのBoschのパワーユニットが人気です。シマノも欧米仕様の電動ユニットを出します。
ややこしいぞ 電動アシスト規制
電動アシスト自転車の規定はエリアで異なります。
- EUは250W以下25km/hまで
- カナダは500W以下32km/hまで
- アメリカは750W以下32km/hまで
シンプルな出力と速度の制限です。
一方、日本の電動アシスト規制は異常に複雑です。
- 9km/h以下で人力:電動の出力の割合が最大1:2
- 25km/h以上で電動アシストはなくなる
- 10-24km/hでの出力は走行速度をキロメートル毎時から10を減じて得た数値を7で除したものを2から減じた数値
はい、意味が不明ですね。
- 20-10=10
- 10/7≒1.43
- 2-1.43=0.57
20km/hのときの人力と電動アシストの比率は1:0.57です。
10kmの式です。
- 10-10=0
- 0/7=0
- 2-0=2
24kmの式です。
- 24-10=14
- 14/7=2
- 2-2=0
速度が10kmから24kmに近づけば近づくほど、電動アシスト力は徐々に弱くなります。『徐々に』がクセモノです。
この日本独特の規制のために海外のモデルは公道を走れません。たんに制限速度を抑えるのは簡単ですけど、徐々に遅くなるアシストのプログラミングは一手間です。
海外モデルが走れるところは公道以外のクローズドエリア、パークやコースやゲレンデや私有地です。
河川敷は昔からグレーゾーンになります。河川敷で友だちの原付を借りて練習をするのはマイルドヤンキーの通過儀礼です。
パナソニックの電動アシストマウンテン XM1
そんなもろもろの事情で北米のスーパーモンスターE-bikeは日本では猫に小判です。が、EUやアジアの規制は日本に似ます。シティ系の電アシはちょくちょく出ます。
実際問題、日本の電アシ御三家はむりに新ジャンルを開拓しなくても、ママチャリ系電動アシストで儲けを出せます。
ヤマハはすでに電動アシストクロスと電動アシストロードバイクを出します。YRPJシリーズです。
これはクロスタイプです。ユニット性能は変わりません。ドロップハンドル、変速なんかが違います。これは税込み199800円です。
で、ライバルの動向を尻目にしつつ、パナソニックが本格電動マウンテンのXM1を抜き打ち発表します。
街でも山でも自由に走れる電動マウンテンバイクが「XM1」登場!
フレームと一体化したバッテリーを搭載し、洗練されたデザインと走りを楽しむための本格的装備で自転車本来の走る楽しさを味わえます。9月1日発売!#WBShttps://t.co/U93RMDY93e— Panasonic Japan公式 (@Panasonic_cp) 2017年7月5日
まず、一体型バッテリーユニットが目を引きます。ようやくここまで来たか! てのが正直なところです。上のヤマハのバッテリーはまだバッテリー感を出します。
内蔵でしゅっとさせるか、外装でアクセントを付けるかはブランドやモデルで分かれます。セミ内蔵でこのルックスは悪くありません。
が、なんでハードテイルでしょうか? 本格をうたうなら一思いにフルサスにしましょう~。この際、重量増はスルーです。
そして、フロントフォークはSR SUNTOURのスルーアクスルですが、フレームのリアエンドは135のクリックリリースです。
135のクイックリリースのMTBホイールてのがもう黄信号です。148のブーストまで行かずとも、142のスルーアクスルにしてくれ~。
そして、変速はDeore SLXの1×10速です。10速?! なんで?! 型番はSH RD M7000 SGSです。現行モデルです。もちろん、SLXのスタンダードは11速です。なんでわざわざ10速をつけるう?
ダウンヒルに特化するなら、一思いにSRAM7速とかにしますよねー。現行モデルの10速のフロントシングルてのはなぞです。てか、うちの先代のカスタムクロスバイクですやんけ。
XT M780のなんちゃって1×10速です。町乗りにはじつに便利ですよ、町乗りには。でも、オフロードには力不足でしょうよ。
油圧ディスクブレーキのSLX BR-M7000はぜんぜん無問題です。これはOK牧場及第点です。本格です。
シートポストはノーマルタイプです。ドロッパーじゃない~。アウト! 町のポジションで山に突っ込む? このご時勢にクイッククランプをしこしこをする? ないよ~。
ホイールは27.5です。これはOKです。2018モデルからBOOST化と29erへの回帰が始まりましたが、数は多くありません。BOOST 29erを持つのは去年後半から今年前半に買った人だけでしょう。
しかし、リムの記載が『アルミ 32h』だけです。チューブレスか否かが定かじゃありません。タイヤはMAXXIS IKONでチューブレスイージーですが、Ebikeモデルです。これはどっちだあ?
そして、ユニットのBBがスクエアテーパーです。調べる限り交換は難しそうです。じゃあ、クランクが限られます。ホローテックかGXPにしといてよ~。
シマノ系、SRAM系、CNCサードパーティ系のクランクが全滅です。ピスト系のクランク? SUGINO? 山でSUGINO?! うーん、ミスマッチです。
フロントリングは41T、カセットは11 13 15 17 19 21 24 28 32 36Tです。クロスバイクのレシオです。
上りをアシストに任せるなら、一思いに11-28Tみたいなロード系クロスレシオカセットに変えて、中間層のギア数を増やすか。しかし、なんで10速だ?
ディスプレーとリモートのボタンはヤマハのださコンパネよりぜんぜんスマートです。これは家電屋の面目躍如です。
サイズは1サイズの400のみです。157~183cm 72~84cmが適応身長です。て、おいおーい! 実際、400サイズは165-175前後でしょうよ。日本人男子平均身長の偏差値の中心です。
そら、小学生もママチャリには乗れますよ。が、適正ではありません。逆もしかりだ。180cm以上のひとには酷でしょうよ。この記載の仕方はザ・アウトです。本格の名折れですわ。
重量は21.8kgです。これはこんなもんです。じゃあ、もうフルサスにして25kgにしてくれよーて思います。
とりあえず、性能的には『電動クロスのフォークをサス付きにしました』てのと大差なしです。山には入れますけど、山では遊べません。
MTB的にはレトロのレベです。プレステ的にはPS3だ。わりと乗り慣れた人が気を遣いながら走って遊べるレベルです。そうゆう意味での本格派だあ? ちゃうか。
機材がよくなれば、乗り手の負担が減ります。初心者が気軽に遊べるレベにするにはざっと20万-30万プラスして、機材をグレードアップさせないといけません。
とにかく、このXM1の仕様は初心者向きじゃありません。中級者向きです。オフロードとしては。
絶対の変更ポイントは
- ドロッパーポスト
- フォーク
- ナローワイドリング
- チューブレス
です。はい、15万~。
あと、ホンカクハを売り文句にするなら、しょーもないECOモードを切り捨てましょう。ノーマルとパワーだけでOKです。
全体的にこのジャンルを本気で欲しい人が思うより丸く大人しい仕上がりです。よくいえば万人向け、悪く言えば生ぬるいローカライズです。MTB的に中途半端だ。
お値段は33万です。SLXのハードテイル完成車20万、電動ユニット10万て内訳を考えると、妥当な価格です。
が、50万でもっとしっかりMTBにしてよ! てのが本音です。競技系する人を「おお!」て唸らせる突き抜け感がぜんぜんない。及第点はほんまにブレーキばかりです。
その人らのほんとの希望はスペシャラの500wのやつです。でも、それはむりだ。どうせ10速にするなら、SAINTやZEEを使えんけ? フルサスやろ? とかの不満がいろいろ聞こえます。
やはり、競技系ホンカクハの人の賛同を得られないと、普及には行き詰りますねー。この仕様では熱心な支援者やファンは生まれませんで。
このXM1の発売日は2017年9月1日です。うーん・・・ヤマハの新型を待ちましょう、ははは。