自転車のトラブルのツートップはタイヤのパンクとチェーン外れです。この二つのわざわいに見舞われずに一年を過ごすのは至難の業です。
たまにチェーンは切れます、ばっつんと。
これはお手上げです。しかし、このような破断はレアケースです。ギアから落ちる、取れる、外れるがチェーントラブルの王道です。そして、屋外駐輪のサビだ。
自転車チェーンの直し方
実際問題、安いママチャリのチェーンはそんなに外れません。1万円前後の安価なものはシングルスピードです。変速機がない。
チェーン落ち、チェーン外れは変速中に多く起こります。自転車の変速機構は一種の脱輪ないし脱線ですから。
変速機=ディレイラーです。つづりは”derailleur”です。これはフランス語系の言葉です。
冒頭の”de”は打消しや反対の意味です。”rail”はレール、線路です。で、”derailleur”は『脱線機』だ。つまり、ギアの変速にはチェーンの脱線が伴います。チェーン外れは宿命です。
内装ギアではこの脱線は起こりません。内装変速は外装より圧倒的にメンテフリーでノートラブルです。NEUXSの3段はシティサイクルの良きお供です。
で、前述のようなシングルギアのチェーンは横に移動しません。動きが一元的です。変速付きのスポーツバイクよりチェーン外れは頻繁に起きない。
しかし、ママチャリの利用者は最多数派です。そして、ほとんどがノーメンテ、無調整で乗り続けます。日頃の空気入れすらおこたる。
結果、トラブル発生率、トラブル件数が爆発し、土日のホムセンの自転車コーナー激込み症候群が発生します。
チェーン外れの原因
シングルスピードのチェーン外れの原因はおもにチェーンの伸びや緩みです。チェーンは経年と使用で伸びます。
自転車のチェーンは小さなリンクの集合体です。このリンク、コマのピッチ(穴から穴の間隔)は共通です。
12速ギア用チェーンも1速チェーンも 1/2インチ=12.7ミリのピッチです。
乗り手がペダルを漕ぐと、チェーンがぴんと張ります。と、コマの中のピンが穴をコンマ単位で押し広げます。
一個一個のコマの穴の変形は微小ですが、チェーン全体ではこれが1-2cmになります。結果、テンションがなくなって、チェーンがゆるんゆるんになります。
ここまで張りが弱くなると、ちょっとした段差や立ちこぎのフレームのゆがみでコマがギアの歯から外れます。
ところで、これはふつうのロードバイクのフレームです。もとがシングルスピード用ではありません。車体にチェーンの調整機能がない。
一方、ママチャリはシングルスピード用です。フレームのエンド部分にチェーン調整機構があります。
左側のナットがそうです。これを締めると、ホイールを後ろに引っ張れますから、チェーンのたるみを取れます。
しかし、例のごとく一般の自転車利用者はメンテナンスをぜんぜんしません。その場しのぎでだましだまし乗り続けます。
チェーンの直し方
とまあ、整備好きの変わり者のぐちっぽいことを切り上げまして、チェーンの直し方を紹介しましょう。
最初に後輪のギアにチェーンを掛けます。もちろん、立ち位置は車体の右側です。自転車の駆動システムは右側にありますから。
そして、後輪をゆっくり逆回転して、チェーンのコマをギアの歯にかたかたと乗せます。水車のようなイメージです。
それから、クランク側のギアにチェーンを乗せます。上の歯に掛けて、ペダルをゆっくり順回転します。
とにかくチェーンの一部を乗せてギアを回します。チェーンの全部を一気に乗せようとしても絶対にできません。こっちが乗ると、ほかが外れる。
イメージは水車、ベルトコンベアです。かたかたかたかた…て感じで回しながら載せていきます。
カバー付きの車体には
ママチャリの中には難敵がいます。前後ギアとチェーンがカバーですきなく覆いつくされたやつだ。
この手の修理は大変です。カバーを外さないと、チェーンにアプローチできません。その場でのセルフリカバリーはほぼ不可能ですね。
ママチャリ、軽快車、実用自転車のメンテナンス性は最悪です。基本設計がかんたんな作業をすら許さない。
まあ、いじって喜べるのは自転車を趣味にする人ばかりです。でも、一般のみなさんもたまにはタイヤの空気圧とかチェーンの緩みとか気にしましょう。
で、チェーンが完全に伸び伸びのサビサビになってるなら、新しいのを買い直しましょう。1速用チェーンはせいぜい数百円ですから。
それから、自転車整備のつもりで呉556をチェーンにぶっかけるのは逆効果です。あれは洗浄剤であって、潤滑剤じゃありません。つまり、リンスでなくて、シャンプーだ。
556は常温で揮発しますから、チェーンに残りません。そこへ雨が来ると、サビが倍増します。
チェーンにはチェーンオイルを使いましょう。