「最近、運動不足だな~。え、ロードバイクで自転車通勤すればかんたんに痩せる? まじですか、ほんとに?!」
もちろん、これはファンタジーです。見通しのあまさ、考えのあさはかさに胸があまずっぱくなります。
たしかに理想的条件化での自転車の消費カロリーはランニングに劣りません。が、その『理想的条件』がなかなか揃いません。
ことさらに通勤通学、自転車通勤、ぞくに『チャリ通』や『ジテ通』ではそうです。
自転車で痩せるのは至難
自転車はらくちんな乗り物です。車は1トンで4人しか運べませんが、チャリは10kg、20kgの車体で60kgの人間を運べます。圧倒的省エネ。ヒトに地球に優しいエコな乗りものです。
おのずと消費カロリーの効率は悪くなります。ヒトへの優しさ=負荷の少なさ=運動強度の低さです。楽ちんな運動で筋肉は太くなりませんし、腹はひっこみません。
痩身目的の有酸素運動の目安は20分~
脂肪燃焼に効率的な運動時間は20分以上です。10分、15分のランニングやウォーキングは気休めにしかなりません。腹はひっこまない。
そして、瞬間的な強負荷の運動は無酸素運動になります。酸素消費がありません。燃えるのは脂肪でなく、糖質です。筋肉は太りますが、腹はひっこみません。
で、自転車です。10分や15分のライドはダイエットにはなりません。強い負荷のヒルクライムや猛烈立ち漕ぎは心肺強化や筋トレには有効ですが、脂肪燃焼には無効です。
- 心肺強化
- 筋トレ
- 痩身
需要の多数派はどれでしょう? 痩身です。ぽっこりおなかをすっきりさせる、体重計の針をマイベスト全盛期に戻す・・・これが一般需要です。
20分以上、中負荷の有酸素運動、これがダイエットにベストです。脂肪がガンガン燃えます。
通勤コースで20分休みなく漕げる?
公道でぶっ続けに20分も自転車を漕ぎ続けられる場面は多くありません。都市部の市街地は基本的にむりです。車、人、信号が行く手を阻みます。
20分をキープするために低負荷でだらだら走るのは本末転倒です。連れと気楽に会話できるようなジョグやウォークやサイクリングはあきらかに負荷不足です。
息が上がらない=汗が出ない=酸素が燃えない=身体があったまらないです。二酸化炭素排出量=酸素燃焼量=脂肪燃焼量です。
ハアハア、ヒイヒイ(二酸化炭素排出)は脂肪燃焼の裏返しです。
7km/20分のハードルは高い
ランニングのダイエットの目安は8km/1hです。自転車ででは20km/1hです。
べッドタウンから都心部への幹線道路では1kmごとに信号があります。市内中心部では500mごとに頻出します。さらに駅、踏み切り、渋滞、工事が加わります。
結果、7km/20分走行への道はこの上なくハードです。効率的な脂肪燃焼のサイクルが信号待ちで途切れる。
チャリ通は細切れ運動
このようにリアルなチャリ通の大半は細切れのスタートアンドダッシュの繰り返しになります。
停車からの発進は強負荷ですが、これは無酸素運動です。ふくらはぎはむきむきになっても、腹はひっこみません。
この都市部の自転車走行の実態を同強度のランニングに変換しましょう。10分ごとにだらだら歩く&一休みするヌルい運動になります。これは不完全燃焼です。
エコや地球には一時エンジンストップはグッドです。しかし、ダイエットには厳禁です。ガソリン=油=脂肪分を早く減らすための燃費の悪さ、非効率性がカギになります。
むしろ、ふかしっぱなし、回しっぱなしが正解です。身体=エンジンを止めない、冷やさない。
もちろん、チャリの走行距離を伸ばせば、消費カロリーを増やせます。しかし、運動の強度、細切れのリズムが変わらないと、燃費は悪くなりません。
3時間チャリ=1時間ジョグ
ちまたのダイエット特集の『自転車で痩せる!』とか『サイクリングは効率的にカロリーを消費できる!』てのはやや誇大なキャッチコピーです。
ぼくの体感では3時間の自転車=1時間のジョグ、50kmサイクリング≒10kmランニングです。
つまり、片道25kmの往復50kmのチャリ通をすれば、細切れを加味しても、痩身効果を見込めます。
片道10km、往復20km前後のチャリ通ではぜんぜん腹はひっこみません。効果は5kmラン以下です。正味の消費カロリーはおにぎり二個分です。
そして、行き=ずっと上り、帰り=ずっと下り、とかでは強度がかたよります。下り10kmの消費カロリーはほぼゼロです。運動効果があやふやになります。
リアルなサイクリングのカロリー消費はムラムラのぼやぼやです。ランニングみたいな分かりやすい計算が成立しません。
ジムのバイクマシンみたいな一定の効果をチャリ通やサイクリングに求めない。
ダイエットの補助にこそベターな自転車
こんなふうに自転車通通勤一本で痩せるのは至難のわざです。理想的条件がなかなか整いません。基本的に自転車はアウトドアですから。
高い自転車を使うとなると、準備や保管で余計な一手間を求められます。運用面でより手軽なランニングやほかのスポーツよりダイエット効率が下がる。
梅雨とか真夏とかはどうしましょう? 雨が続いて、自転車出しがめんどくさくなって、間が開くと、ギブアップの足音がひたひた聞こえます。
とにかく、自転車活動をダイエットのメインにするのはNGです。不確定要素が多すぎる。不安定だ。
でも、補助オプション的な意味合いのチャリ通は有意義です。だらだら系チャリ通20km+ウォーキング5km、ジョギング5km、筋トレとかはグッドです。
同じくサイクリング単体の運動効果はそんなに高くありません。休日にだらだら長乗りすると、基礎代謝が増えますから、見かけの消費カロリーは多くなりますが。
つまり、ロードバイクの理想的条件化の消費カロリーはそこそこですが、現実的な環境とはやや乖離します。コースや交通状況は個人の力ではどうにもこうにもなりません。
ロードよりランニングのがダイエット向き
カロリー消費の大事なポイントは重量と強度です。ロードは10kg以下の軽量バイクです。らくに速く走れます。つまり、エネルギー効率が良好です。省エネマシーンだ。
一方のママチャリは20kgの鉄の塊です。15km/hを出すのにひいこらします。エネルギー効率は劣悪です。ヘビーマシーンです。ノット省エネマシーン!
短所は長所です。10kgのビハインド=10kgのアドバンテージです。ナチュラルなおもしです。
正味、ロードで20km/1hよりママチャリで15km/1hのがダイエット視点では効率的です。カゴに10kgの米を積めば、さらに負荷をアップできます。
もっと手軽にママチャリのスタンドを立てて、玄関でブレーキちょいがけしながらガシガシ空回しすれば、まあまあの運動効果を望めます。なんちゃって室内エアロバイク作戦です。お母さんに怒られるか。
水泳? ぶよぶよの体の線を人前にさらせます? 市民プールはお年寄りの憩いの場です。このご時世にジムは不衛生ですし。
とにかく、「ロードバイクに乗ればだれでも楽ちんに痩せられます!」というのは単なるキャッチコピーに過ぎません。
「このシューズを履けばだれでも楽ちんに痩せられます!」
「このサプリを飲めばだれでも楽ちんに痩せられます!」
「この壷を買えばだれでも楽ちんに痩せられます!」
はい、根本的内容はこんなあやしい宣伝文句と変わりません。『だれでも楽ちんに痩せられます!』そんな魔法のアイテムはこの世に存在しない。
正解はこうです。
「自転車で20km/1hを60-90分、週に4-5回の頻度ですればそこそこ痩せられます!」
「だらだら自転車通勤をして、週末にちょこっと遠出をすれば、ぎり太りません!」
目標の月間走行距離は600km前後です。ハードルは高めです。ことさらにコースが難関です。ノンストップでそこそこ走れるか?
まあ、常識的にランニングが気楽で安上がりです。理想的条件作りがわりと楽ですし、イメージとリアルの乖離が少なめです。
「でも、ローバイクでレース強度で走ればもりもり痩せられるよ!」
それはそうです。レース強度、実戦レベルでもりもりやれば、たいていの運動で痩せられます。走っても痩せられる、歩いても痩せられる。
「ロードバイクだとレース強度まで上げやすい!」ということはぜんぜんありません。関節系への負荷はたしかにマイルドですが、それはまた別のはなしです。
少なくとも一般人の想像する『ダイエット感覚』でロードバイクを漕いでも、ほかのスポーツ的手段よりもりもり痩せられるってことはない。
ダイエット感覚 < フィットネス感覚 < スポーツ感覚 < 部活感覚
この順にきつさが上がります。それぞれのレベルにはけっこうなギャップがある。
一般人、メタボおじさん、主婦的目線の気軽さの上限はせいぜい『フィットネス感覚』でしょう。そこに『部活感覚』を持ち込むのはナンセンスです。
ダイエットの補助や息抜きにベスト
自転車、ロードバイク、サイクリングの単体のダイエットは非効率的です。これを痩身のメインにするのは失敗への第一歩です。短期的な結果がなかなか出ません。
が、サイクリングや自転車遊びは爽快なものです。そして、ペダリングの負荷は関節や筋肉に紳士的です。足がじかに地面に触れません。運動の反発がマイルドだ。
気晴らし、補助、リスクヘッジの一つとしてチャリを大いに利用しましょう。また、サプリや健康甘味料やカロリーオフ食品も作戦のひとつです。
ちなみに最も効果的な自転車ダイエットはインドアトレーニングです。スマートトレーナーでZwiftが大流行ですね。