個人でクラウドファンディングをやってみた 成功の秘訣と失敗の実例を大反省

人気のお笑い芸人のネタのごとく2020年末に時を戻そう。場所は大阪市内某所の一室です。

b4cマガジン編集部
b4cマガジン編集部

「編集長になって、雑誌を創刊しませんか?」

「はい、やります!」と即答できる人は相当な猛者です。ぼくは耳を疑って、何度か聞き返しました。

時をさらに巻き戻しましょう、2015年末に。その年の夏に折り畳み自転車を買って、自転車趣味に目覚めたぼくは自転車のブログを始めました。おかげさまで平均アクセス数は50万/1月ほどです。

その3年後の2018年末に同じく自転車のYouTubeを始めました。おかげさまでチャンネル登録者数は20000人ほどです。

B4CのYouTubeチャンネル

その2年後の2020年末に自転車マガジンの創刊プロジェクトを始めました。これはぼくの自発的なものでなく、出版社さんからお誘いになります。

つまり、上記の問いに即答こそできませんでしたが、少し考えて、その場で「やります!」と言ってしまいました。

雑誌の作り方

しかし、雑誌の発行は簡単なものではありません。定期刊行の商業誌です。ブログ本やフリーペーパーとは違います。

しかも、担当さんが「既存の雑誌の型に嵌らない読者参加型の自転車マガジンをやりましょう!」と意欲的なことを仰います。

主要なコンセプトは以下の通りです。

①読者参加型
②企業や業界に忖度しない
③既存の自転車雑誌やメディアへのアンチテーゼ

はい、若干のコンセプト渋滞です。全部を一気にやるのは至難の業。

とくに②は商業誌の仕組みとは相反します。なぜなら雑誌の利益の大半は企業広告だから。

このために大手の雑誌の実態は業界の広告と薄味の内容と評論家のレビューという名の妙なポエムの寄せ集めです。

このような雑誌は凡庸で退屈で軽薄でマンネリですが、発行部数の確保と長期の運営には有効です。手堅いビジネスだ。

では、この定番の方式を排除して、どんな方法で雑誌の費用を集めるか?

「クラウドファンディングをやりましょう!」

ふむ、そう来たか。

クラウドファンディングって?

Wikipediaの解説を引用します。

クラウドファンディング(英語: crowdfunding)とは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する。ソーシャルファンディングとも呼ばれ、日本語では「クラファン」と略されることもある。

要はオンライン・カンパです。普通のカンパは身内や顔見知りからしか集まりませんが、クラファンはネット上の不特定多数の人から集まります。

国内のクラウドファンディングサービスはMAKUAKE、CAMPFIRE、Readyfor、kibidangoなどです。

「クラファンで雑誌の費用の一部を集めましょう。支援者数が予約販売の目安になりますし、読者さんからのネタや意見も集まりますよ」

たしかにクラウドファンディング方式は今回の自転車雑誌のコンセプトを補完できます。

ところで、出版社さんの発言は無責任に聞こえますが、費用の大部分や流通・製本・販売のコストはあちらの負担です。出版社にもこのプロジェクトは相当なチャレンジです。

また、ぼくは前からクラファンには注目していて、たまたまCAMPFIREのアカウントを持っていました。

「じゃ、ぼくのCAMPFIREのアカウントでやってみましょうか?」

「お願いします。250万円を集めてください」

これで雑誌創刊のクラウドファンディングが決定しました。公開より3週間前のことです。

結果的に安請け合いを痛感しました。クラウドファンディングは予想より大変です。おまけに編集長の業務もあります。あと、ブログと動画と確定申告・・・

クラファンはチームでやれ!

クラファンのノウハウはぼくたちにはありません。さらに時間も資金もありません。事前に用意できたのはCAMPFIREのアカウントとプロジェクトの概要、リターンの仮案だけでした。

しかし、これだけではプロジェクトの作成には素材がぜんぜん足りません。

  • 本文
  • 画像
  • 動画
  • リターン

これらは必須です。とくに画像や動画はテキストより大事です。クラファンはネット通販的な要素を含みます。見た目が9割だ。

魅力的な画像や動画をページに使わないと、ユーザーの興味を引けません。興味を引けないと、理解や共感を得られません。まずは興味です。

出版社からの準備物はペライチのテキストのみです。画像や動画はありません。結局、ぼくが動画の過去動画から抽出したり、新規に作ったりしました。

紙面のスペースの提供の画像もぼくのお手製です。

リターン画像
リターン画像

基本的にこのような作業はデザイナーの仕事です。そして、ぼくはデザイナーではありません。審査直前までちょこちょこ手直しして、こましなものに仕上げました。

リターンが10種類であれば、画像も10種類です。追加でTシャツの画像をアップしました。

B4CTシャツ仮
B4CTシャツ仮

徹夜の力作です。しかし、これはぼくの得意分野ではありません。発案者やアカウント保持者はプロジェクトリーダーに専念するのがおすすめです。

後日、視聴者の絵師さまより記念のイラストを頂き、ユニクロでサンプルを作ってみました。

B4CのTシャツ本気
B4CのTシャツ本気

うむ、プロの仕事は違うな。

公開後が本番

テキストと画像で魅力的なページを作って、審査に通して、公開する・・・この時点でのクラファンの進捗率はせいぜい20%です。

クラウドファンディングの勝敗は事前準備と事後処理に掛かります。

・告知
・顧客対応
・リターン返送

通販のページだけ作っても、宣伝をしないと、お客を呼べません。お客を呼べないと、お金を集められません。

YouTuberでブロガーのぼくの本来の役目はプロジェクトのプロモーションでしょう。広告塔だ。

しかし、アカウント所持の流れから日々の支援者の確認、お礼のメール、出版社への問い合わせの取り次ぎ、リターンのリクエストまでやるはめになります。きつい! きつすぎる!

・・・はい、これは愚痴です。おかげでぼくのなかのクラウドファンディングの経験値は急激にアップしました。一人クラファン希望者はメールへお問い合わせください。

100万以上のプロジェクトを一人でやるのはおすすめではありません。個人よりチームの方が効果的に資金を集められるというデータがありますし。

ぼくが次に100万以上のクラファンをやるなら、以下のような布陣を組みます。

・プロジェクトリーダー
・エディター
・デザイナー
・広報
・顧客対応

孤独な一人プロジェクトは精神をガリガリ削ってくれます。相談相手がいません。唯一の解決策はブログで愚痴です。

小規模クラファンには短めがおすすめ

プロジェクトは非常にストレスフルなものです。公開中はほぼ24時間体制です。株のデイトレードのようなものですか。

とくに一人で長々やると、確実に心身を消耗します。1~2人で小規模プロジェクトをするなら、期限を一ヶ月以内にしましょう。

くしくもぼくは42日に設定してしまいました。まさに準備不足のフルマラソンです。じり貧の中盤がとくにハードだ。

仮に募集の期間を長くしても、アクセスを誘導する対策を練らないと、支援者を集められません。支援者を集められないと、シンプルにへこみます。

長期公開中にたまたまネットニュースやSNSに取り上げられるという可能性はありますが、それはほぼ運です。

クラファンマラソン初心者には30km=30日くらいがベターでしょう。統計でも1~2ヶ月が有利です。

それより、準備期間に時間を割きましょう。

消費税掛かる?!

クラウドファンディングには三つのタイプがあります。

・寄付型
・購入型
・投資型

通常のクラファンは購入型です。何かの見返りを約束して、資金を集める・・・これはほぼ予約販売です。

実際に最近の国内のクラウドファンディングは急速に通販サイト化します。『海外の人気商品を先行販売!』のようなプロジェクトが人気です。

このような購入型のクラファンは慈善事業でなく、営利事業です。支援金はプロジェクトの終了後に指定の口座に振り込まれます。

で、今回の自転車雑誌の創刊プロジェクトの支援金はぼくの銀行口座に振り込まれます。審査のときにそう指定しましたから。

最終的にこのお金は出版社のところに回り、取材費や製本代や運営費になります。ぼくは取り次ぎに過ぎません。

ちなみに現時点でのぼくの報酬はノーギャラです。むしろ、FacebookやTwitterやGoogle広告がうちの個人事業からの持ち出しで赤字です。

雑誌で利益を上げないと、お金を貰えません。まあ、打合せでパフェとかコーヒーとかを奢ってもらえますが。

で、クラファンの支援金はぼくの個人事業用の口座を経由して、通帳にがっつり記載されます。この金の流れは完全に『売り上げ』です。

で、満額の250万円やそれ以上の金額が売り上げで計上されると、総所得が増え、さらに消費税がちらつき始めます。

閾値は年間1000万円です。年間の売り上げ(利益ではない)がこれを越えると、消費税が掛かります。税額は単純計算で100万円です。

幸か不幸かぼくの個人事業の年間売り上げは1000万以下ですから、消費税免除の対象ですが、クラファンの支援金の額面次第で大台に乗りかねません。

うーん、困った・・・

CAMPFIREでは支援金を受け取れるのはプロジェクトの発案者か共同発案者のみです。この件では出版社が共同発案者になります。

後日、プロジェクトを再編集して、再審査に掛けて、出版社の口座を受け取り先に設定しました。滑り込みセーフ。

と、このようにクラファン=寄付の先入観がありますが、一般的な購入型のクラファンの支援金は売り上げ(会社員では雑所得)です。税金はがっつり掛かります。

自転車マガジンのクラファンです

そんなてんやわんやの自転車マガジンのクラファンをCAMPFIREで公開中です。この記事の作成中についに50%を越えました。

自転車の楽しさや強みを広く伝えられるような雑誌を目指しております。みなさまのご支援、拡散、シェアをお寄せください!

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