スポーツ自転車のチェーンのオイル差し、ルブ入れは定期メンテの代表格です。細かい人は週一、月一、雨天走行後にまめまめしくやります。

オイル入れ
こまめなオイル入れはパーツの寿命を延ばし、トラブルを減らします。反面、チェーンはすぐにどろどろになりますが。
ぼくはジーパンのすそを心配して、カラカラチェーンをながらく放置します。メンテは半年に一回ですね。おかげで一本のルブがやたらと長持ちします。このAZのルブは3代目です。
オイル、ルブ、グリスみたいなケミカル製品の価格は奇々怪々です。シマノの油圧ディスクブレーキのミネラルオイルは小瓶入りの50mlが1000円、高級地酒や年代物のウイスキー級の価格です。
が、ポリタンク入りの1000mlは2000円です。差額! Finish LineのDOTフルードもオートバイ用の数倍の価格です。
シマノのデュラエースグリスあらためプレミアムグリスもファンタジープライスです。中身はごくごくふつうのグリスです。ブランド台と容器代ですね。
こんな事情から『専用』や『高性能』のケミカル類には懐疑的にならざるをえません。高性能をうたいつつ、たしかなデータや比較を出しませんし。
ここに新生が登場します。UFO DRIPがそれです。
セラミックスピード発のUFO DRIP
高級セラミックベアリングで名をはせるセラミックスピード社、UFOはそのセ社のプロジェクトのUltra-Fast Optimisedの頭文字です。直訳は『超速最適化』でしょうか。
UFOが日本ユーザーの前に現れたのは2015年前後です。ロードバイクのトップレースでこのプロジェクトのチェーンが注目を集めます。
はい、油に入れる前のから揚げのように粉まみれです。粉吹き鎖、パウダードチェーンです。なによりかによりこの衝撃的なビジュアルがセンセーショナルを巻き起こしました。
そして、そのお値段が追い打ちをかけます。2万円! 粉まみれのチェーンがピカピカのママチャリより高価です。
白い粉はテフロンパウダー
この白いUFOチェーンの素材、衣抜きの具は既成のシマノやカンパの11速用チェーンです。こんな他社の製品から純正オイルを脱して、特製配合のワックスと粉をまぶします。
この白い粉の正体はテフロンのパウダーです。テフロンはアメリカの化学屋デュポン社の商品名で、本名はポリテトラフルオロエチレンて冗長なものです。
で、テフロンはフライパンやおなべのコーティングでおなじみです。

フライパン+水
テフロンは熱で溶けません。粉状態がノーマルです。これを加熱と圧縮で固定させます。表層だけのコーティングです。
ちなみにサスペンションによく使われるカシマコートはアルミの小さな穴にモリブデンを流し込んで作られます。
モリブデンはテフロンやそのほかの潤滑媒体より小さい粒子です。アルミ地におくふかくじわっと浸透します。そのほかより高耐久です。
うちのTHOMSONのドロッパーポストのしたのところがカシマコートです。ごぞんじのようにぬっるぬるです。

THOMSONドロッパーのサドル側のワイヤー取り回し
単純な滑りやすさではテフロンが上です。しかし、ほんとの薄皮の表層にしかコーティングできません。サス系には不向きです。2、3回のライドで剥がれます、きっと。
テフロン=薄皮
カシマコート=真皮
ぐらいの差です。
UFOチェーンにはこのテフロン粉がたっぷりと塗りたくられます。チェーンみたいなふくざつな形の表面に圧と熱でぎゅっ! とコーティングするのは不可能です。逆転の発想のダイレクトぶっかけです。
液体より滑る固体
一般のイメージでは液体のが固体よりつるつる滑ります。低摩擦です。しかし、テフロンみたいな超潤滑物質はそこらの液体より低摩擦です。
もちろん、テフロンを流動的な液体にすれば、より理想的な潤滑剤をできましょう。しかし、上述のようにテフロンは粉末状でしか存在しません。おそらく流動化できたら億万長者になれます。
摩擦を減らす媒体=粘液、流動体、オイルてイメージが旧来の常識でしかありません。摩擦を減らすことに命をかける摩擦減らし屋のセラミックスピード社はこの常識をUFOの粉チェーンでうちやぶります。
レース用の自転車のチェーンてところがポイントです。こんなアナログなアイディアがぎりぎりで通用する。大がかりな工作機械、精密機器にはこのテフロン粉のぶっかけはむりでしょう。
白い粉発売!UFO DRIP
この衝撃のチェーンから数年の歳月が流れまして、レース会場向けだったUFOがお茶の間に飛んできました。UOF DRIP、未知のしずくです。
ドライタイプのルブ、てか、コーティング剤です。テフロンは溶解しません。液体はチェーンへUFOを行き渡らせるための案内役にすぎません。揮発性の液体です。
最終的にチェーンは乾燥して、粉を吹きます。UFOがご自宅で可能になりました! この商品の売りは競合の自転車用潤滑剤との徹底的な比較検証です。実質、このデータが商品価値の大部分です。
定番のFINISH LINE DRY Teflonがざっと5で、このUFO DRIPが3.7です。しかも、検証データでは走行後に摩擦抵抗がさらに減ります。テフロン粉がええ感じになじむ?
とにかく、このデータは非常に良心的な情報です。てか、ほかのケミカルがうやむやに過ぎますわ。デュラグリスのなにがデュラグレードだったか? なぞです。ふんいきとブランド代か・・・
黒く汚れない
ぼくの個人的な注目はUFO DRIPの低摩擦度でなくて、汚れにくさです。オイル、グリス、粘液の全般はもれなくダストを吸って、まっくろになります。
ウェットタイプのルブは10分でこうなります。

余分なオイルをふきふき
で、普段着でチャリに乗ると、ズボンの右すそをもれなく汚してしまいます。ダボダボのジーパンのすそとかは常にまっくろです。靴も汚れる。
この一事を予防するためにUFO DRIPを使おうかと思います。ずぼんを汚しても、ぱたぱたぱたって気軽に払い落とせましょうか?
発売ほやほやでレビューやインプレが見当たりませんね~。