2018-2019シーズンのロードバイク界は最速エアロ選手権大会のふんいきを醸します。アメリカ御三家のTREK、CANNONDALE、SPECIALIZEDが一斉に新型フラッグシップを送り出します。
先陣はキャノンデールの二代目Systemsixです。初のエアロロード、ディスクブレーキオンリー、統合型デザインコンセプトのKNOT、てHOTな話題をふりまきます at 2018年7月2日。
あけて7月3日、ライバルのSpecializedのエアロロードバイクVengeの新作の情報が公式に解禁されました。初代より7年、前作のVenge Viasより3年の三代目Vengeです。
革新的なフルモデルチェンジを果たすこの次世代最速エアロロードの最有力候補を見ていきましょう。
Specialized Venge 2019
Vengeの特徴はエアロです。今回の新型Vengeのキャッチコピーはまんま「新しい世界最速のバイク」です。
これは口先のはったりばかりではありません。スペシャラは社内に風洞実験施設のWin-Tunnelを自前で設営して、ぞんぶんにエアロ実験をやりまくれます。設計屋さんらしいこだわりです。
ちなみにこれがそのWin-Tunnelです。扇風機、ターンテーブル、温室のちゃんぽんみたいな設備です。リムブレーキ対ディスクブレーキの比較動画です。
新型Vengeはまさにこの実験設備の申し子です。旧モデルから正当な進化を果たして、TTモデルのSHIVと同レベルの空力性能を備えます。
ビジュアルがスマートに
スペシャラジャパンのTweetを借りましょう。これが新型Vengeです。
【スピードの新しい形】
待望の新しいVengeがついに登場。
>https://t.co/Gdz2XvJsyj7月7日(土)二子玉川ライズで行われる スポーツ専門TV局 J SPORTS開催のイベントにおいて、16時~17時に新しいVengeのプレゼンテーションを行います。入場無料です。
>https://t.co/ERMwcfnGMA#jspocycle pic.twitter.com/yNgewBXMNG— スペシャライズド・ジャパン (@specialized_j) 2018年7月3日
「あれ、スマートだね? てか、Tarmac SL6みたい」
三代目Venge S-worksの第一印象はそんなところです。ちまたのVengeのイメージ=先代のVenge Vias=ゴリゴリエアロ! です。3代目のインプレはマイルドです。
むしろ、この新型のイメージは万能軽量モデルのTARMACに似ます。こちらは2018年にフルモデルチェンジして、エアロ形状やオフセットステーを手に入れました。並行的にDB化が進行します。
で、この新しいマイルドなVengeの実態は凶悪なエアロモンスターです。ヨー角0度で40km走行時にイカつい二代目Venge Viasより8秒速くなります。
460gの大幅軽量化
エアロロードはそのごついデザインからしばしば重くなります。計量モデルのフレームの重量は600-900gですが、エアロフレームはふつうに1000gを越えます。
重量は平凡なノーマルカーボンや超軽量アルミとどっこいどっこいです。この特性のおかげでヒルクライムには不向きです。つまり、日本国内では人気と需要がない。下りの速さが活きない。
エアロフレームとマッチするディスクブレーキは剛性の関係でさらに重くなります。パワーで漕がない軽量、小柄なアジア人にはちとヘビーです。
が、新型Vengeは万全です。設計の見直しで460g/56サイズの大幅な軽量化を果たします。
軽量化の内訳は、
- フレーム:240g
- フォーク:25g
- コックピット:107g
- シートポスト:25g
- そのほか:63g
です。フレームの240gは特大のダイエットです。てか、Venge Viasのフレームの重さが逆に気がかりです。むきむきマッチョなルックスはだてではありません。
この軽量化でVenge Sworksのハイエンドの完成車が7.1kgになります。オールラウンダーがUCI規定の6.8kgの呪縛から逃れられません。重量差はいよいよ肉薄します。
旧車のカーボンオールラウンダーはもっとヘビーですし。
フレームは電動DB専用
Specializedはロードバイクのディスクブレーキ化には積極的です。MTB部門もトップクラスの人気と実力を持ちます。DBのノウハウはぜんぜんあります。どこぞのイタリアブランドではありません。
また、スペシャラのなかの人の過去の発言に「うちは数年以内にロードの全モデルをDB化する!」てものがあります。これも口先のはったりではありません。アメリカですから。
むしろ、スペシャラやTREKやキャノンデがそれをしなくて、どこのチャリ屋がそれをしましょう? 欧州系のロード屋にそんな革新性はありません。やはり、イノベーションはUSAのおはこです。
で、新型Venge 2019は電動コンポ、ディスクブレーキモデルのみです。機械式ドライブトレインとの互換性はありません。
フル外装のケーブルむき出しでルーティングすればむりやり使えましょうけど、統合的エアロデザインの利点を根本的に損ねてしまいます。
エアロ、DB、統合型デザインないしインテグラルスタイルが今後のロードバイクの指標です。はてはウェア、シューズ、アクセサリ、そのほかの小物の専用化・統合化です。
車体からウェアから作れて、流通からアフターケアまで出来るGIANTがそれに近いことをすでにします。ロードバイクスタイル&スポーツ自転車サービスのパッケージ化みたい販売方式です。
ハイエンドロードのバラ完の終焉がじわじわ近づきます。統合、統合、バンドル、バンドル、抱き合わせ、抱き合わせ・・・
ワイドクリアランス
近年のディスクブレーキ化とチューブレス化でスポーツバイクのタイヤは全体的にワイド化します。オフロードの+系セミファットタイヤはその象徴です。

Schwalbe G-oneとWTB Ranger 3.0
このトレンドに準じて、ロードバイクのタイヤは数年のあいだに23cから25cへ、さらに25cから28cへ大きく太くなります。
最近のエアロフレームのクリアランスは30mm前後まで拡大します。

3T STRADA クリアランス
32mmのシクロタイヤやグラベルオールロード系のタイヤが収まります。で、このタイヤのワイド化とチューブレスのエアボリュームアップで快適度が跳ね上がります。
おかげで少々のノイズやストレスをタイヤの調整で散らせます。ホイールのスポークテンションの管理な小難しいものは急速に過去のものになります。タイヤ管理のがぜんぜんらくです。
タイヤを変えれば、乗り味やスタイル、究極的には自転車ジャンルさえをがらっと鞍替えできます。太いタイヤのエアロロードの快適性はエンデュランスロードに劣りません。
げにタイヤは、空気は偉大です。
約束された勝利の剣
この新型Vengeはすでにトップレースの実戦に投入されて、サガンやヴィヴィアーニらの手で、いや、足で数々の勝利を収めます。
沈黙を守るTREK MADONE DB、復権をもくろむCannondale System Sixとの三つ巴の最速新型エアロロード対決がにわかに熱を帯びます。
上半期の前哨戦はVengeの圧勝ですが、ツール、ブエルタはどうなるか?
最上位Venge S-worksのお値段は1296000円です。フレームセットは540000円です。旧モデルのViasから+10%の値上げが入ります。イッツ・セレブリティバイク!