いにしえの商都、堺ノ国に拠点を置く総合自転車パーツ&釣具のシマノは4年ごとに看板商品のシリーズを一新します。
2017年はシマノのMTB入門用コンポのDeoreとロードのセカンドコンポUltegraのモデルチェンジイヤーでした。目玉はアルテグラホイールのRS落ち&分派です。これでネームドホイールがDuraばかりになりました。
2018年はロードの普及クラスの105とMTB最高グレードのXTRが衣替えシーズンを迎えます。おそらく型番は105 5800が105 R7000、XTR M9000がXTR M9100になります。

国内の注目は新型105に集中しましょう。一方、世界のチャリ界の関心は新型XTRの動向です。待望の12速化がなるか? オフロード用のXTRパワーメーター? どんでんがえしの13速化だあ?
オフロードの主導権はSRAMに
シマノはオンロード機材では絶対のアドバンテージとシェアを持ちます。ツールドフランスの機材はシマノさん、シマノさん、ひとつとばしてシマノさんです。
しかし、オフロード機材ではアメリカのSRAM社がぐいぐい台頭します。SRAM主導のフロントシングルシステム、1xのいきおいが本流のオフロードから、オールロード、グラベル、アドベンチャー、アーバンへと波及します。
実際、うちの歴代のクロスバイク、ミニベロ、MTB、ロードバイクのいずれがフロントシングルです。ライトユーザーの自転車シーンはだいたいこの1xのなかに収まります。
2×22、3×8、3×10、3×11…パンピーは使い切りません。たすき掛けの禁止の意味がよく分からない。一部のギア比は被る。フロントマルチははんざつです。
そもそも最近のMTBフレームにはFDの台座がありません。

今後、リアの変速数がさらに増えて、13速14速になれば、フロントディレイラーの存在理由がなおさらに薄れます。
代わりにカセットのスーパーワイドレシオが拡大します。8-52Tとかの6倍オーバーが出ますよ、きっと。そして、さらなるフレームの拡大です。Super Boost Plusが来ます。
その1x屋さんのSRAMは2016年に12速のSRAM EAGLEを市場に投入しました。

EAGLEシリーズにフロントダブルやトリプルのオプションはありません。フロントシングルのみです。ギアは10-50Tのジャスト5倍です。
てか、スラムは公式に「うちはオフロードのフロントメカを金輪際に作りません!」て宣言して、退路を断ちました。
2017年には廉価版のGX EAGLEが出ました。6万で12速化できます。
シマノ12sは2020年まで持ち越し?
で、われらのシマノです。新型XTRが12速にならないなら、つぎの12速候補は次世代のデュラ、Dura-Ace R9200(仮)になります。これの登場予定は2020年、東京オリンピックの年です。
おそらくその前にSRAMの12速のRED、FORCE eTapが来ます。※カンパニョーロさんが先手を打ちました!
SRAMのロード用の新型フリーボディのXDRドライバーは一足飛ばしの13速化の可能性さえ持ちます。
SRAM発規格にぼちぼち対応
2016年後半からシマノはSRAM主導の規格にしぶしぶ対応しはじめます。SLXやXTのBOOST用のハブ、完組ホイールの販売、既存モデルのナローワイドチェーンリングオプションなどです。
で、XTRの12速化の実現は不透明ですが、BOOSTハブ、BOOST用の完組ホイール、フロントシングル用のナローワイドリングは確定です。
需要的にフロントシングル >>>> フロントマルチです。実感的に10:1です。フロントマルチを選ぶのはXCやトレイルのコアユーザーやレーサーです。スタンダードじゃありません。
おかげでMTBのフロントメカがぜんぜん売れません。さらに電動XTRや電動XTの人気がいまひとつです。むしろ、世間の視線はE-bikeの電動アシストユニットのSTEPSに集まります。
げんにぼくはちょい乗り用のMTBをいちから組み立てますが、電動化Di2とフロントマルチをまっさきに候補から外します。
シマノの電動コンポシステムのDi2の売りのセミオートマ変速『シンクロシフト』がフロントシングルバイクでは無意味になります。リアは機械式で十分になめらかです。
ロードバイク乗りがシマノクランクを選ぶのはおもにフロント変速のなめらかさを重視するからです。フロント変速をはなから度外視すれば、ほかのクランクを気軽に使えます。
剛性は30mmスピンドルのクランクに劣りますし、軽さはフルカーボンのものに劣りますし、ビジュアルはいつもの南大阪スタイルです。
あと、中空のXTRクランクは鍛造のアルミクランクよりきゃしゃです。岩にHIT! 木にCRASH!でわりと破損します。
ここに余分な費用を出すなら、フォーク、サス、ドロッパーポスト、ホイール、そして、タイヤを優先します。オフロードバイクには電動以外のべんりガジェットがたくさんです。
トップギアの小型化に期待
12速以外の希望的観測はスプロケットのトップの小ギア化と超ワイドレシオ化です。
これはSRAM XD用のXX1カセットです。削りだしの疑似1ピース構造のスプロケです。トップの歯数は10Tです。

これはHGカセットみたいにばらけません。これが最小構成です。ロックリングはカセットと一体型です。取り付け工具はおんなじです。
マウント側のXDフリーボディはこんなです。

トップにギャップがあって、軸が小さくなります。このおかげでトップギアやセカンドギアに9Tや10Tを使えます。
通常のフリーボディには11T以下のギアをセットできません。おなじみのこの形状です。

歯の大きさは統一です。チェーンのリンクのピッチが統一ですから。このフリーボディのサイズに付けられる最小ギア数は11Tになります。
Capreoがキー
シマノはすでにこのXDフリーみたいな技術を持ちます。小径車用のコンポのCapreoです。このコンポのハブのフリーは独自の専用品です。トップは9Tです。
このようにCapreoのハブのフリーのトップもギャップダウンします。XDの元ネタはこれでしょう。トップ小ギア化の下地はぜんぜんあります。
9Tと11T、歯数の差は2つですが、比率の差は20%です。リア9T x フロント30Tはリア11T x フロント36Tに匹敵します。
フロントギアを小さくできれば、チェーントラブルを減らせますし、剛性を出せますし、軽くできます。ダイレクトマウントでさらに剛性がアップします。

こんなリングの硬さはボルト止めリングの比じゃありません。たわまない、ゆがまない、われない。ほんとにかっちかちです。頑丈さはジャスティスです。
29erのホイール x 2インチタイヤはロードの標準の700 x 25よりでかくなります。おのずと足回りは重くなります。それでも、11×32や11×34は下り坂では物足りなくなります。
ぼく的には9 x 32、10 x 34あたりがジャストレシオです。下りで立ちこぎして、がしがし踏めます。これを踏み切れるのは相当な剛脚です。
ついでにフロントをでかくしすぎると、もとからきつい登りにひいひいはあはあ大苦戦します。回帰的トレンドの29er、29er Plusバイクはなおさらです。
自転車ブランド各社の2019モデルのハイエンドMTBは29erのSRAM EagleモデルかXTR M9100モデルの二択になりましょう。
XTR FC M9100 クランク予想図
はしやすめにXTR M9100のクランクの予想図を描きます。

はい、アームなしのダイレクトマウントです。スパイダーアームは別売りのオプションになります。あと、M9000クランクの専用設計のへんなカバーは禁物です。

地道な軽量化のくりぬきは工業製品的にはすばらしいものです。しかも、4つのカバーの大きさと形がビミョーにちがいます。こんなこだわりは不要です。
おまけにXTRとXTとSLXのリングの互換がありません。XTRだけが異質の存在です。
一気に13速化? XTRパワーメーター?
万が一の大反撃で一足飛びのXTR13速化はなきにしもあらずです。このままののんびりマイペースサイクルで行くと、ずっとSRAMの後追いになりかねません。
でも、最近のシマノの矛先は電動ユニットのSTEPSやパワーメーターみたいなハイテク機器に向かいます。じゃあ、目玉はXTRパワーメーター FC-M9100 Pだあ? Di2以上に無用の長物です。
シンプルに機械式12速、BOOSTハブ、小ギア、4ピストンブレーキでSRAM EAGLEと真っ向勝負してくれ~。
ティザーが来たぞ!
て、せっかちな大予想からはや一年、長らく沈黙を守ったTwitterのShimano MTBの公式アカウントが短いPVを発表しました。4アームのクランクのシルエットと2018年5月25日の数字が見えます。
Something pretty damn awesome is about to come… pic.twitter.com/oddVv71Iby
— ShimanoMTB (@ShimanoMTB) 2018年5月23日
来たぞ来たぞ来たぞー!! わ、1xモードがキービジュアルだあ! ダイレクトマウント? ダイレクトマウントですけ?! はぴー!!
デュラエースはオリンピックイヤー、XTRはFIFAワールドカップイヤーです。ネイマール!!!
新型XTR M9100のまとめ
で、現地時間2018年5月25日付でオフィシャルのチャートがアップデしました。XTR9100 12sの爆誕です。
ローンチの概要はこんなです。
- 基本は1×12速 2×11はオプション
- トップギアが10Tに
- 最大10-51Tのメガレシオカセット
- ダイレクトマウントクランク
- 4ピストンブレーキ追加
- 24mmシャフトは継続
- BOOST対応
- Super BOOST+も視野に
- DTフレンドリー
- ローンチに電動は見当たらない
- ドロッパーポストレバー
- ラチェットが新設計Scylenceでしずかハブ!
- フリーボディが専用品HG+に!!
- 完組XTRホイールがない!!!
- ビジュアルがシマノぽくない!!!!!!!!!!
完組ホイールの撤廃がいちばんのサプライズです。